こんにちは、タクローです。
今回は、パート、アルバイトの方で所定労働時間が日によって異なる場合の有給休暇取得時の賃金について、まとめてみました。
全ての労働日において所定労働時間が6時間で、時給が1,000円のパート、アルバイトの方が有給休暇を取得した場合、取得時の賃金は6時間分の6,000円支給すればよいことになります。
では、下記のような条件で働いていた場合はどうでしょうか?
勤務日 | 労働時間 |
---|---|
火曜日 | 6時間 |
木曜日 | 6時間 |
土曜日 | 3時間 |
時給 | 1,000円 |
---|
週3日勤務で、土曜日だけ3時間、他の曜日は6時間労働するわけですから、先ほどと同じ考え方をすると、火曜日と木曜日に有給休暇を取得する場合は6時間分の6,000円、土曜日に有給休暇を取得する場合は3時間分の3,000円を支給します。
この考え方だと消化した有給休暇は「1日」でも、火曜、木曜日に休んだ方が、土曜日に休むより賃金が多くもらえるということになります。
以前、私が勤務している会社でもこういったシーンに直面することがありました。
その時、給与計算担当者が次のようにつぶやきました。

何となくスッキリしないな…。
確かに火曜日と木曜日に休んだ方が多く賃金がもらえます。
ですから、有給休暇を取得する曜日が偏ることになってしまうでしょう。
しかし、この考え方は間違っているわけではなく、正しい処理方法です。
早々に答えが出てしまいましたが、今回はパートやアルバイトの方の有給休暇に関する記事を書きました。
もし、私の勤務先の給与計算担当者と同じように、何となく「スッキリしない」という感想をお持ちなら、最後までどうぞお付き合いください。
目次
パート、アルバイトの方の有給休暇
有給休暇は次の条件の両方を満たしていれば付与されます。
- 雇われた日から6か月、継続して勤務していること。
- その期間内に契約上全労働日の8割以上出勤していること。
さらに、次の条件のどちらかを満たしていれば、「10日」の有給休暇が付与されます。
- 週の所定労働時間が30時間以上
- 週の所定労働日数が5日、または1年間の所定労働日数が217日以上

心配しなくても、大丈夫です!
有給休暇は正社員だけでなく、正社員より労働時間が短いパート、アルバイトの方にも付与されます。
会社は長期間にわたって働くすべての方に有給休暇は付与しなければなりません。
パート、アルバイトの方であっても、「雇われた日から6か月継続して勤務していて、かつその期間内に契約上全労働日の8割以上出勤」の条件を満たしていれば、有給休暇が付与されます。
つまり、週の所定労働時間が30時間未満、週の所定労働日数が4日以下でも有給休暇は付与されます。
ただ週の所定労働日数が少なくなると、付与される有給休暇日数も少なくなります。
「雇われた日から6か月継続して勤務していて、かつその期間内に契約上全労働日の8割以上出勤」の条件を満たした時点で付与される有給休暇の日数を下の表でまとめます。
所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 付与日数 |
---|---|---|
5日 | 217日以上 | 10日 |
4日 | 169日~216日 | 7日 |
3日 | 121日~168日 | 5日 |
2日 | 73日~120日 | 3日 |
1日 | 48日~72日 | 1日 |
また、勤続年数が増えると有給休暇の付与日数も増えていきます。
それについては、次で説明します。
年次有給休暇の付与日数
正社員であっても、パート、アルバイトであっても勤続年数により付与される有給休暇の日数は増えていきます。
勤続年数による付与日数についてまとめます。
正社員など通常の労働者
勤続年数(年) | 付与日数 |
---|---|
0.5 | 10日 |
1.5 | 11日 |
2.5 | 12日 |
3.5 | 14日 |
4.5 | 16日 |
5.5 | 18日 |
6.5以上 | 20日 |
週所定労働日数が4日で週所定労働時間が30時間未満の労働者
週以外の期間によって労働日数が定められている場合、1年間の所定労働日数が「169日~216日」
勤続年数(年) | 付与日数 |
---|---|
0.5 | 7日 |
1.5 | 8日 |
2.5 | 9日 |
3.5 | 10日 |
4.5 | 12日 |
5.5 | 13日 |
6.5以上 | 15日 |
週所定労働日数が3日で週所定労働時間が30時間未満の労働者
週以外の期間によって労働日数が定められている場合、1年間の所定労働日数が「121日~168日」
勤続年数(年) | 付与日数 |
---|---|
0.5 | 5日 |
1.5 | 6日 |
2.5 | 6日 |
3.5 | 8日 |
4.5 | 9日 |
5.5 | 10日 |
6.5以上 | 11日 |
週所定労働日数が2日で週所定労働時間が30時間未満の労働者
週以外の期間によって労働日数が定められている場合、1年間の所定労働日数が「78日~120日」
勤続年数(年) | 付与日数 |
---|---|
0.5 | 3日 |
1.5 | 4日 |
2.5 | 4日 |
3.5 | 5日 |
4.5 | 6日 |
5.5 | 6日 |
6.5以上 | 7日 |
週所定労働日数が1日で週所定労働時間が30時間未満の労働者
週以外の期間によって労働日数が定められている場合、1年間の所定労働日数が「48日~72日」
勤続年数(年) | 付与日数 |
---|---|
0.5 | 1日 |
1.5 | 2日 |
2.5 | 2日 |
3.5 | 2日 |
4.5 | 3日 |
5.5 | 3日 |
6.5以上 | 3日 |
年次有給休暇取得時の賃金
年次有給休暇は賃金が支払われる休暇のことです。
では、年次有給休暇取得時の賃金はどのようにして計算すればよいのでしょうか?
労働基準法39条によると、年次有給休暇取得時の賃金は、次のいずれかを支給することとしています。
- 平均賃金
- 通常の賃金
- 健康保険法における標準報酬日額
ただし、標準報酬日額で支給する場合には、労使協定が必要となります。
過半数労働組合、または労働者の過半数代表者との書面による協定により、標準報酬日額に相当する金額を支払う旨、定めなければなりません。
一つずつ順を追って説明していきます。
平均賃金
平均賃金はどのように計算するのでしょうか。
原則として、計算すべき事由が発生した日(有給休暇取得日)以前3か月間に支払った賃金の総額を、その期間の総日数(歴日数)で割って計算します。
直近の賃金締切日から起算してそれ以前3か月間の賃金で計算します。
ただし、平均賃金には最低保証額があります。
計算すべき事由が発生した日(有給休暇取得日)以前3か月間に支払った賃金の総額を、その期間の労働日数で割って、さらにその金額の60%が最低保証額です。
注意したいのは、原則による平均賃金の場合は、期間中の総日数(歴日数)で割り、平均賃金の最低保証額の場合は、期間中の労働日数で割って計算することです。
原則により計算した平均賃金額が最低保証額を上回った場合、原則により計算した平均賃金を採用します。
逆に、原則により計算した平均賃金より最低保証額が上回った場合、最低保証額が平均賃金ということになります。
実際に例を挙げて、平均賃金を計算してみましょう。
勤務日 | 労働時間 |
---|---|
火曜日 | 6時間 |
木曜日 | 6時間 |
土曜日 | 3時間 |
時給 | 1,000円 |
---|
賃金締切日 | 毎月20日 |
---|---|
算定事由発生日(有給休暇取得日) | 1月10日 |
賃金計算期間 | 総日数 | 労働日数 | 賃金 |
---|---|---|---|
11月21日~12月20日 | 30日 | 13日 | 66,000円 |
10月21日~11月20日 | 31日 | 13日 | 66,000円 |
9月21日~9月20日 | 30日 | 13日 | 63,000円 |
原則により計算した平均賃金 |
---|
(66,000+66,000+63,000)÷(30+31+30)=2,142円 |
最低保証額 |
---|
(66,000+66,000+63,000)÷(13+13+13)×0.6=3,000円 |
原則により計算した平均賃金より最低保証額が上回っていますので、平均賃金額は3,000円ということになります。
通常の賃金
私の勤務先の給与担当者がスッキリしなかった計算方法です。
有給休暇というのはその日の所定労働時間だけ勤務したと見なすものです。
先ほどの例をもう一度使って、確認してみます。
勤務日 | 労働時間 |
---|---|
火曜日 | 6時間 |
木曜日 | 6時間 |
土曜日 | 3時間 |
時給 | 1,000円 |
---|
通常の賃金で有給休暇取得時の賃金を計算してみます。
火曜日、木曜日に休んだ場合 |
---|
1,000円×6時間=6,000円 |
土曜日に休んだ場合 |
---|
1,000円×3時間=3,000円 |
私の勤務先の給与担当者みたいに、「何となくスッキリしない」、「納得できない」、「ちょっと変じゃないか」なんて思う方もいらっしゃるかもしれません。

通常の賃金を使う場合で考えると会社が「全ての労働日において同じ所定労働時間」という条件で雇用するしかないでしょう。
健康保険法における標準報酬日額
有給休暇取得時の賃金を標準報酬日額で支給する場合、労使協定が必要になりますので注意が必要です。
標準報酬日額は標準報酬月額を30で割った額です。
標準報酬月額は健康保険料を算定する基礎となるものです。
今回、パート、アルバイトの方を例に挙げています。
社会保険に加入しないことも多いと思いますし、標準報酬月額は都道府県によって金額も異なります。
よって、実際の計算方法例については割愛させていただきます。
まとめ
今回、具体的な例を挙げて平均賃金と通常の賃金を実際に計算してみました。
もう一度、計算した有給休暇取得時の賃金額を確認してみます。
平均賃金 | 通常の賃金 | |
---|---|---|
火曜、木曜日(6時間労働)に休んだ | 3,000円 | 6,000円 |
土曜日(3時間労働)に休んだ | 3,000円 | 3,000円 |
比較するとわかりますが、平均賃金で計算された有給休暇取得時の賃金の方が少なくなります。
労働時間が長い日に有給休暇を取得すると賃金が少なくなるのです。
ですから、有給休暇を取得すると知らない間に給与支給額が減ってしまうという人もいるようです。
もし心当たりがあるようでしたら、有給休暇取得時の賃金に「平均賃金」が使われている可能性を考えてみるとよいでしょう。
とは言っても、会社側にしてみれば平均賃金の方が人件費を削減できます。
それは会社側にとって、大きなメリットとなるでしょう。
しかし、デメリットもあります。
それは「平均賃金」を計算するのに、手間がかかることです。
社員が有給休暇を取得する度に、過去3か月の給与を遡って平均賃金を計算する必要が出てきます。
手間がかかるだけではありません。
有給休暇を取得することで賃金が少なくなる可能性があるわけですから、労働者のモチベーションに悪い影響を与えるかもしれません。
会社側にとっても、「一長一短」と言えるしょう。
そのような理由からでしょうか、有給休暇取得時の賃金は「平均賃金」ではなく「通常の賃金」を使っている会社が多いようです。
スッキリしていなかった給与担当者も納得せざるを得ないと言ったところでしょうか。
貴重なお時間、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。