こんにちは、タクローです。
今回のテーマは働きながら年金をもらう人の年末調整と確定申告についてです。
老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は、支給開始年齢である65歳に達した時から受給できます。
ただ、近年、年金受給年齢になっても再雇用や再就職を望む人が増えてきています。
平均寿命も延び、超高齢化社会になっていく中、元気なうちは働いて収入を少しでも増やしておきたいという方が多いのです。
働きながら年金をもらう人は、もちろん所得に応じた税金を納付する義務があるわけですが、勤務先で行う年末調整だけではダメなのでしょうか。
確定申告が必要なのでしょうか。
今回は年末調整、確定申告といった所得税の納付手続きがテーマですが、収入が給与収入と年金収入のみで、他に収入がないことを前提としています。


目次
年末調整とは
どこかに雇用されて働いていれば、会社から給与をもらうわけですから年末調整の手続きは欠かせません。
年末調整とは、1年間の収入に対する本来納めるべき所得税額(年調年税額)と、すでに支給された毎月の給与や賞与などから天引きされた所得税額を比較。
その差額を計算して、精算する手続きのことです。
本来納めるべき税額が、すでに天引きされた税額より少なければ、差額が還付されることになります。
しかし、本来納めるべき税額の方が多ければ、追加で徴収されてしまいます。
確定申告も目的は同じです。
収入が給与や賞与だけであれば、年末調整を行うことで所得税額が確定するため、確定申告を行う必要はありません。
ただ、年金の収入については、年末調整ではなく、確定申告で税額を精算することになります。
年金をもらいながら働く人は、年末調整をしたうえで、さらに確定申告もしなければならないのでしょうか。
年金は雑所得
さきほどの説明と重複しますが、どのような雇用形態であれ、会社に雇用されていて、給与収入金額が2,000万円以下であれば年末調整を行います。
給与収入の他に年金収入があった場合、給与以外の年金は雑所得です。
雑所得の金額が20万円以上であれば、確定申告が必要になります。
まず、これが大原則となります。
年金に係る雑所得の計算方法
年金収入が雑所得であることがわかったところで、雑所得をどのように計算すればよいか見ていきましょう。
これから見ていく計算方法を基に、雑所得の金額を算出し、それが20万円以上であれば、確定申告が必要ということになります。
その前に、年金にはざっくり分けて、公的年金等と公的年金等以外の2種類あることを説明させてください。
公的年金等 | 国民年金、厚生年金、国家公務員共済組合法などの法律の規定に基づく年金 |
恩給(一時恩給は除く)や確定給付企業年金契約に基づいて支給を受ける年金等 | |
公的年金等以外 | 生命保険契約や生命共済契約に基づく年金、互助年金など |
公的年金等に係る雑所得の計算方法
公的年金等に係る雑所得の金額を求める計算方法は以下のとおりです。
65歳未満の方の場合
公的年金等の収入金額 | 公的年金等に係る雑所得の金額 |
---|---|
70万円以下 | 0円 |
70万円超130万円未満 | 収入金額-70万円 |
130万円以上410万円未満 | 収入金額×0.75-37万5千円 |
410万円以上770万円未満 | 収入金額×0.85-78万5千円 |
770万円以上 | 収入金額×0.95-155万5千円 |
65歳以上の方の場合
公的年金等の収入金額 | 公的年金等に係る雑所得の金額 |
---|---|
120万円以下 | 0円 |
120万円超330万円未満 | 収入金額-120万円 |
330万円以上410万円未満 | 収入金額×0.75-37万5千円 |
410万円以上770万円未満 | 収入金額×0.85-78万5千円 |
770万円以上 | 収入金額×0.95-155万5千円 |
公的年金等に係る雑所得以外の計算方法
公的年金等に係る雑所得以外の金額を求める計算方法は以下のとおりです。
収入金額=公的年金等以外の年金の収入金額+剰余金や割戻金
必要経費=公的年金等以外の年金の収入金額×(保険料又は掛け金の総額÷年金の支払額又は支払総額の見込み額)
確定申告不要制度とは?
年金をもらいながら働く人は、雑所得が20万円以上であれば、勤務先で年末調整をした後に、確定申告を行わなければなりません。
ただ、確定申告の負担を軽減するための制度として、「確定申告不要制度」というものがあります。
一定の要件を満たせば、確定申告手続きが免除されるのです。
この免除制度「確定申告不要制度」を利用するためには、以下の要件を全て満たす必要があります。
- 公的年金等の収入額の合計が400万円以下である
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である
今回、給与収入の他年金収入以外の収入はないという前提で説明していますので、ここで出てくる公的年金等に係る雑所得以外の所得というのは、給与所得のことになります。
給与所得の計算方法は以下のとおりです。
給与所得の計算方法
給与等の収入金額 | 給与所得の金額 |
---|---|
1円以上650,999円以下 | 0円 |
651,000円以上1,618,999円以下 | 収入金額-650,000円 |
1,619,000円以上1,619,999円以下 | 969,000円 |
1,620,000円以上1,621,999円以下 | 970,000円 |
1,622,000円以上1,623,999円以下 | 972,000円 |
1,624,000円以上1,627,999円以下 | 974,000円 |
1,628,000円以上1,799,999円以下 | 収入金額÷4(千円未満切り捨て)×2.4 |
1,800,000円以上3,599,999円以下 | 収入金額÷4(千円未満切り捨て)×2.8-180,000円 |
3,600,000円以上6,599,999円以下 | 収入金額÷4(千円未満切り捨て)×3.2-540,000円 |
6,600,000円以上9,999,999円以下 | 収入金額×90%-1,200,000円 |
10,000,000円以上 | 収入金額-2,200,000円 |
確定申告不要制度に該当する人はどんな人?
給与所得を計算する表内の黄色で強調した部分をご覧ください。
給与所得が20万円以下ということは、給与の収入金額が85万円以下ということになります。
つまり、公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ給与の収入金額が85万円以下であれば、確定申告が不要となるのです。
ただ、年金でも所得税が天引きされることがありますので、結果として所得税を払いすぎていたということもあるのです。確定申告をすることで、その払いすぎた税金(所得税及び復興特別所得税)の還付を受けられる場合があります。
還付を受ける場合には、確定申告をする必要があるのです。
また、確定申告が必要ない場合であっても住民税の申告が必要な場合があります。
住民税の申告については、市区町村の窓口へお問い合わせください。
確定申告が必要な人はどんな人?
今まで確定申告が必要かどうかを説明してきましたが、まとめると以下の条件に当てはまる人は確定申告をしなければならないのです。
- 給与等の金額が2,000万円超、または年金の収入金額が400万円超の場合、確定申告は必要
- 給与等の金額が2,000万円以下、公的年金等に係る雑所得の金額が20万円超(公的年金等の収入金額が90万円超)の場合、確定申告は必要
- 公的年金等の収入金額が400万円以下の場合、給与所得の金額が20万円超(給与等の収入金額が85万円超)の場合、確定申告は必要
まとめ
働きながら年金収入がある人を対象に、確定申告について説明してきました。
確定申告が必要ない条件に該当すれば、面倒な手続きが免除されるわけですから、忙しい方にとってはとても助かります。
ただ、公的年金等により所得税が天引きされていて、住宅ローンを利用して住居を購入した場合、また高額の医療費を支払ったりした場合は、確定申告をすることで所得税が還付されることもあります。
場合によっては、確定申告をしないことで損をしてしまうこともあるのです。
確定申告が必要ない条件に該当していたとしても、還付される税金がないか慎重に確認しましょう。